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株式会社 新井精密の取組事例

データの蓄積、解析、活用~DXチャレンジが企業の可能性を広げる~

株式会社 新井精密

業種

  • 製造業

取り組みテーマ

  • 情報化戦略

活用した支援

  • その他補助金活用
事業概要 :CNC⾃動複合旋盤による⾦属精密加⼯

Before/取組み前の課題

・紙媒体での記録が多く、過去のデータ閲覧や情報の活用ができない
・人を介する作業が多いため、生産状況を把握できる人員が偏ってしまう

After/取組みによる効果

・各記録の電子化によってデータベースが構築され、各方面で有効活用できた
・各工程の「見える化」と数字精度の向上で、誰もが状況把握可能となった


【企業紹介】

長期間収集したデータを解析、有効活用する

自動車部品をはじめ空圧機械部品や医療機器部品、電子機器部品など、幅広い分野で高品質・高精度の金属加工を行う株式会社新井精密。1978年の個人創業、1984年の株式会社設立から一貫して、職人の金属加工技術の向上と、顧客のニーズに対応した低コスト・短納期の実現を追及してきた。
同社は2016年に秩父市小柱の新工場へ移転。最新鋭の設備を備え、365日・24時間体制で0.01mm単位の高精度な部品を生産し、正確かつ緻密な検査を行い、出荷し続けている。
高品質・高精度が問われる金属加工業において、業務の生産性や正確性を向上させ、効率化を計るDX推進は重要度の高い課題といえる。しかし、常に工場が稼動している環境で、どのように課題の解決策を打ち立て、新システムに移行させるのか?リソースが限られがちな中小企業共通の悩みを乗り越えた経緯について、営業部部長の石間戸氏は「8年ほどかけた地道な準備期間がありました」と語る。
石間戸氏「弊社では長年慣例化していた紙ベースの受注管理の脱却が目標でした。また、生産中の部品は複雑な工程を辿るため、管理できる担当者が限られることも懸念でした。さらに、加工機ごとの生産実績が見えないことも課題だったので、データ収集・見える化・実績取得を総合的に行う管理システムを開発すべく、営業部において生産実績、受注、納品のデータ収集を行っていました。また、生産部との協力を得て社内プロジェクトを立ち上げました」

代表取締役 新井 利幸 氏

営業部部長 石間戸 利之 氏

【活用したデジタルツールと効果】

生産管理課 門田 善裕 氏

作業進捗を共有する大型モニター

部門を横断したプロジェクトで独自の生産管理システムを構築

データベースを構築し、適切に運用する独自の生産管理システムの開発プロジェクト。外部に委託する選択肢もあったが、再雇用で入社した生産管理課の門田氏の活躍によって自社開発が可能になった。
門田氏「前職は中小企業でデータベースの構築から運用まで、全工程を管理するプログラマーとして働いていました。今回のプロジェクトも同様の規模感だったので、仕組みづくりだけでなく、運用まで見越して開発を行いました」
3部門の協力でデータベース化を進め、2017年にはQRコードを用いた製品管理システムを導入。工場で稼働中の生産設備をネットワーク化し、工程ごとに現品票のQRコードをスキャンすることで、加工品がどの工程にあるのかをリアルタイムで正確に把握でき「見える化」が可能になった。
データは社内での生産工程管理表に即時反映され、作業進捗は現場のモニターに投影される。これによって工程管理の属人化は解消され、同時に様々なデータを収集・蓄積することで、効率化が進み、正確性も向上した。
代表取締役の新井氏は「システム導入によって無駄や不足、情報の流れが多方向に効率化し、従来に比べて20%ほど改善したと感じています。納期遅れも無くなりました」とDX化の効果を振り返り、データ活用の重要性について語る。
新井氏「加工機からの生産実績数取得も自動化したことにより、取得した実績データを元に、加工機の刃物の摩耗度合いを予測し、交換サイクルを管理できるようになりました。データ収集と解析はさまざまなことに役立つので、メーカーと協働してシステムをカスタマイズしながら、ネットワーク化に対応した加工機への切り替えを進め、すでに95%は対応しています。来年には全て切り替えられる予定です」

【今後の展望・メッセージ】

チャレンジの声が通る環境で互いに“切磋琢磨”する

現場から立ち上がったDX化のプロジェクトは、社内で大小のアクションを引き起こした。全社員にスマートフォンやタブレットが配布され、情報共有で取り残されない環境が整えられた。また、生産部部長の髙田氏は、生産管理システム開発に携わった後、個人的にプログラミングやアプリ開発に興味を持ち「小さなDX」を試みている。
髙田氏「仕事の合間にプログラミングを学んで、お昼のお弁当発注が簡単になるアプリを作ってみました。スマートリモコンと温度計を連動させて、工場のエアコンが自動で適温に調整される仕組みも開発しました。少しずつ知識を蓄えて、システムへのデータ入力・集計などパソコン上の事務作業を自動化するツールを導入したりと、細々としたところから現場を改善しています」
社員が自発的に新たなスキルを身につけ、担当業務を拡大できる環境と、その時間的ゆとりを生み出すことは、DX推進で望まれる大きな効果のひとつだ。
新井精密は堅調に売上を伸ばし、社員の増員を続けている。新井氏は「自社の加工技術を高めて他社との差別化ができるかどうかは、どれだけ人材育成に集中できるかに関わる」として、今後の展望を語る。
「自社システムは今後、多方面に展開して更なる効率化を目指します。また、社員一人ひとりが現場から気軽に声を上げられる環境を作り、成長できるアイデアにチャレンジできるように資金を投資していきたいですね」

生産部部長 髙田 明良 氏