Before/取組み前の課題
・サプライヤーの在庫状況が、外部から確認しづらかった。
・バイヤーが欲しい部品を探すのに手間がかかり、部品にたどり着けないこともあった。
After/取組みによる効果
・適正価格での在庫マッチングが可能になり、余剰・過剰在庫の売買がスムーズになった。
・検索エンジン最適化により、取引機会が増加し、サプライチェーンの効率化を促進。
DEVICE PARTNERS株式会社の取組事例
業種
取り組みテーマ
DEVICE PARTNERS株式会社は、埼玉県川越市に本社を構え、電子部品や半導体の調達・販売、電子機器の受託開発・製造・販売、ニッチな市場向けに自社製品の開発・製造・販売を一貫して手掛ける。 20年以上にわたり電子部品・半導体関連の企業で幅広い経験を積んできた、代表取締役の泉崎直樹氏が2020年に創業。商社とメーカーの機能を併せ持ち、柔軟な発想、企画、提案と迅速な対応力を強みに事業を展開する。 同社が事業を始めた矢先、世界を襲ったのが新型コロナウイルスによるパンデミックである。これにより、部品調達や納期管理の混乱をはじめ、電子部品・半導体業界のサプライチェーン全体に深刻な影響が及んだ。工場の閉鎖や物流の混乱により、各工程で停滞や遅延が発生。さらに、生活スタイルの変化による在宅需要の急増が重なり、電子部品や半導体の需給バランスが一気に崩れ、部品価格が高騰した。その反動で、コロナ収束後には一転して業界全体が在庫過多に陥った。この価格の乱高下や余剰・過剰在庫は、業界に深刻な影響を与えた。 電子部品・半導体業界には長年続いてきた取引慣習があり、特に中小規模のメーカーや商社が過剰な在庫を抱えざるを得ない状況があった。余剰在庫の投げ売りが日常的に行われる現状を目の当たりにし、泉崎氏は「余剰・過剰在庫の問題を根本的に解決する仕組みを作りたい」という想いを抱くようになっていた。 |
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ちょうどこの頃、業界内ではIT技術を活用した業務改善の動きが広がりつつあった。同社もこの流れを「企業価値を高める機会」と捉え、DX認定の取得を決意。「エレクトロニクス業界へ広く価値を提供するデジタルサービスの確立」を目指すことにした。
その第一歩として開発したのが、電子部品や半導体の過剰・余剰在庫を持つ企業と、必要とする企業をオンラインでつなぐプラットフォーム、「DEVICE PARTNERS REAL TIME SEARCH SERVICE PLATFORM¹」である。これは、一般的に広く利用されているフリマアプリをBtoBに特化させたような仕組みで、電子部品・半導体の型番を検索すると在庫情報が表示され、オンライン上でスムーズに見積依頼や在庫管理が行える。“サプライヤーファースト”で売りやすさを重視し、在庫情報をもとに適正価格でのマッチングが可能になることが大きな特長だ。 サプライヤーとバイヤーが無料で登録できるこのプラットフォームは、両者の間に入り、食品ロスになぞらえた「電子部品・半導体ロスを削減する」役割を果たす。サプライヤーファーストで「売る」にフォーカスしているため、**「お気持ち手数料」**として見積価格の5〜10%を頂戴するビジネスモデルを採用。余剰・過剰在庫の削減と適正な価格での取引を促進し、在庫最適化を目指している。 ユーザーが求めるのは、検索時にすぐ在庫状況がわかること。そのニーズに応えるため余計な機能をそぎ落とし、必要な情報に一目でたどり着けるシンプルなデザインを徹底した。さらに、Googleなどの検索エンジンで発見されやすい設計にすることで、サプライヤーが抱える在庫や製品の潜在的な取引機会を拡大。今後のグローバル展開を見据え、英語版サイトも用意している。 このプラットフォームは、同社のINVENTORY事業の中核として稼働しており、現在約50社が登録・利用している。利用者からは「自社のホームページに掲載していたときより在庫の販売数が増えた」という喜びの声も寄せられている。 |
![]() ![]() ![]() ![]() 説明動画 (https://www.youtube.com/watch?v=uWaQaDfdP08) ![]() ![]() DEVICE PARTNERS RTSSP (https://www.devicepartners.net) |
DXはあくまで手段にすぎない。より多くの企業にプラットフォームを活用してもらい、在庫ロスの解消やサプライチェーンの改善といった具体的な成果につなげることが目標だ。そのために、国内での登録企業数をさらに増やし、「電子部品・半導体を探すならDEVICE PARTNERS REAL TIME SEARCH SERVICE PLATFORMで」と言われるほどの認知度を高めたい。その先には、海外市場への展開も視野に入れている。
同社は、商社・EMS・メーカーとしての事業に加え、ニッチな市場向けに商品を企画・提案・デザイン・開発・製造・販売まで一貫して手掛けるPRODUCT事業にも力を入れている。特に玩具メーカーからの信頼は厚く、安定した取引基盤を築いてきた。今後はこうした経験を活かし、玩具分野で新しい「玩具業界向け組み込みプラットフォーム」の事業化に挑むとともに、将来的には自社家電製品の開発・製造・販売も目指している。 DXは、経営や商流そのものを変革し、新たな価値を生み出す大きな武器となる。創業以来、黒字経営を維持してきた同社は、小回りの利く柔軟性を生かして業界課題の解決を目指し、これからも成長を続けていくだろう。 |
DEVICE PARTNERS株式会社