Before/取組み前の課題
・業務プロセスの非効率性が人件費の増大を招き、コストが圧迫されていた。
After/取組みによる効果
・受発注管理、勤怠管理の自動化により、月次の集計作業が半減した。
・社内でのデジタル化により業務負担が軽減され、従業員の満足度が向上した。
株式会社アルファサービスの取組事例
業種
取り組みテーマ
活用した支援
昭和62年創業の株式会社アルファサービスは、地域密着型でビルや住居の清掃、リフォーム、設備点検、衛生管理などのサービスを提供している。顧客層は法人・個人を問わず、埼玉県南西部から東京北部まで広がり、社員の年齢も21歳から81歳と幅広い。現在、2代目の櫻井社長が、さらなる成長を目指してDX化を推進している。
櫻井社長は、事業継承時に既存の業務フローを見直した。それまで勤怠管理や受発注の処理はすべて紙ベースで行われ、手作業の煩雑さが原因でミスも多発していた。また、営業報告書も「訪問先だけ記載する」程度の内容で、経営者として詳細な現場の状況を把握することが困難だった。さらに、現場で撮影した写真データを印刷したものが膨大な紙の山となり、保管スペースを圧迫するとともに、資料の管理も難航していた。 こうした非効率なプロセスが人件費の増加につながり、コスト面での負担が重くなっていたことを受け、DX化を通じて抜本的な業務改善に取り組むことを決断。デジタル技術の導入により、業務の効率化と精度向上を図り、コスト削減に加えて売上向上も目指すことにした。 |
櫻井社長はまず、「紙を無くすこと」「電話をメールにすること」から着手。FAXや紙ベースのやり取りをオンライン化、社員にスマートフォンを支給して写真データをクラウドに保存するようにした。この取り組みで印刷コストが大幅に削減され、報告書もPDF化されることで、現場の状況が明確かつ迅速に把握できるようになった。また、作業履歴の自動記録により、社員の位置や業務状況をリアルタイムで確認できるようになり、業務効率や利益率が大幅に向上した。
次に、見積書や請求書などの管理をデジタル化。受発注の仕組みや顧客管理、新規顧客へのアプローチまでを一元化した。朝霞市商工会や埼玉県商工会連合会のサポートを受けながら、営業支援システム(cyzen)、マーケティングオートメーションツール(BowNow)、受発注システム(Board)、勤怠システム(TIMECARD)、Google Workspaceなど、業務効率を上げるためのツールを次々導入。コストや操作性を考慮し、試し、最適なものを選んでいった。これらにより、月次の集計作業は半減し、営業支援システムによる迅速な顧客対応が可能となっていった。 一方で、デジタルリテラシーの差から一部の社員が新しいシステムの習得に苦労するなどの課題も発生。既存の業務フローを変更することへの抵抗感もあったものの、各自の習熟度に合わせ、粘り強く社内研修を実施、デジタル技術に対する理解を深めさせることに注力した。 櫻井社長は、「DX化を行わなければ業務の非効率が続き、コスト増や競争力の低下が避けられなかった」と考えている。従業員の負担が増えれば、モチベーションや顧客満足度も下がる可能性がある。「まずはシステムを変えれば人も変わる。これから、弊社なりのウリを出していける」とDXの重要性を強調し、「真剣に取り組めば、一人工は削減できる」と語る。 |
櫻井社長はDX化を通して、受注を増やしながら社員教育とスキル向上も図り、業務効率を高める計画を進めている。今後はAIを活用した、問い合わせへの自動応答やデータ分析を用いた営業戦略の強化を図り、CRMシステムの導入や遠隔業務管理システムの構築も検討している。
技術革新を進める一方で、従業員が安心して働ける職場づくりにも力を入れ、毎朝の全体ミーティングなどリアルなコミュニケーションも重視している。業務の自動化やAI活用に期待を寄せつつも、清掃業務には依然として人間の経験が必要とされる場面があり、デジタルと人の役割を明確に区分している。 さらに、清掃技術向上のため、事務所内にキッチンやエアコンなどの設備を設け、実務指導や練習ができる研修施設を整備している。知識共有のための研修ルームも設け、将来的にはこれらのノウハウをデジタル化し、外部向け研修として提供する計画も進行中。「清掃業の枠を超え、地域に恩返しできる企業を目指したい」「これまで行き届かなかったご家庭まで清掃サービスを届けたい」と抱負を語る。 最後に、もともとロジックで考えるタイプだったのですか?と聞いてみた。櫻井社長は、「昔、野球でキャッチャーをやっていた。その頃から、全体を見てこの次どうなるかを考えるように。それが今につながっているのかもしれません」と笑顔で語った。 |
株式会社アルファサービス