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三洋テグス 株式会社の取組事例

AIによる画像認識システムで、草刈り用ナイロンコードの品質と生産性がアップ

三洋テグス 株式会社

業種

  • 製造業

取り組みテーマ

  • AI
  • IoT活用

活用した支援

  • 公的機関支援
  • AI・IoT・ロボットシステム導入トライアル補助金
事業内容 草刈り用コードの企画開発、製造販売

Before/取組み前の課題

・ボビンにまかれた原材料であるナイロン原糸は、ボビン軸中心付近にまかれているものほど巻き癖が強く残り、材料として不適格になっており、歩留まりを悪くしていた。
・ナイロンコードにストッパーをインサート成形にて溶着する際、曲がり癖の大きいものについてストッパー中央にインサートすることが困難であった。

After/取組みによる効果

・レベラーを導入、AIによるナイロンコード画像判定によりレベラーを制御することで巻き癖の除去ができるようになり、それまで使用できなかった巻き癖の強いナイロン原糸が製品に使用できるようになり歩留まりが改善した。
・ナイロンコードの巻き癖が解消されたことにより、後工程であるインサート成形の作業効率が向上した。

◆原材料であるナイロンコードの巻き癖が、生産性向上の足かせになっていた

 三洋テグス株式会社はナイロン製の草刈り用コードを開発・製造する所沢市の企業。草刈り用のナイロンコードは、金属刃に比べて草刈り機を利用する際の安全性や簡便性に優れており需要が高い。三洋テグス株式会社は全国の大手ホームセンター向けに約40%のシェアを得ていた。
草刈り用のナイロンコードは、ボビンに巻かれた原糸をカットして製造される。この際、ボビンの巻き癖は中心部になるほど大きくなるため良好な仕掛品とは言えなくなり、後工程の作業性低下を引き起こしたり、製品不良の原因となったりする。そのため、原糸材料のうち製品に使用できる良品は原糸材料の半分ほどに留まっていた。材料の歩留まりを向上させ生産性を上げるため、レベラー(上下に配置されたローラーで材料を挟むことでゆがみを矯正する装置)とAIによる画像判定を組み合わせた機構を導入する図る試みが始まった。
各種装置の導入費用に関しては、埼玉県産業振興公社の「AI・IoT・ロボットシステム導入トライアル補助金」を活用した。

◆ AIによる画像解析を製造過程にフィードバックするシステム

 まず、レベラーで巻き癖を除去するためにどの程度の加圧・加温が必要であるかの基礎実験を行った。実験ではコードを加温した状態でローラー間隔を変え、どの程度コードの曲がり具合が減少するのか、常温に戻った際に巻き癖が戻るのかを測定した。 当初、巻き癖の矯正には加温が必要であると考えていたが、実験によってレベラーの加圧でナイロンは軟化し矯正効果があることが分かったため、加熱装置は無用となった。
切断されたナイロンコードのセパレータ作成のために、エアーバイブレーター(加振器)を用いた実験も行った。曲率を画像判定の際には、それぞれのコードを重なりなく撮影する必要があるためである。しかし実験と検討を重ねた結果セパレータは導入せず、切断スピードの調整や工程を工夫することで課題を解決した。
次に切断したナイロンコードの画像で学習データを作成。これを用いた機械学習により、曲率を等級に分類できるAI画像解析システムを開発した。
続いて、ナイロンコードの切断を行う製造工程に、AI画像解析システムを連動させたレベラーを製作した。
このシステムではまず、原糸ボビンから送り出されたコードはOFF状態のレベラーを通り、切断機で定寸にカットされる。カットされたナイロンコードは搬送コンベアで次の工程に送られる途中にカメラで検知し撮影を行う。撮影データについて画像解析(寸法長さ、曲率半径の測定)を行い、OK/NGの判定を行う。ここでNGであった場合にレベラーが動作し、コードの曲がり癖矯正を自動で行う。
レベラーの製作にあたっては、部品発注・納品で問題が起こり補助金事業期間中で調達することが厳しくなったため、社内で内製することにした。

◆さらなる生産性向上のため、製造工程の改善は終わらない

 レベラーの導入以前は、ナイロン原糸のうちおよそ半分ほどは巻き癖が強く製品に使用できなかった。今回のプロジェクトで巻き癖の除去が可能になったことにより、それまで製品に使用できなかったナイロン原糸が使用できるようになったことにより歩留まりが向上した。
のちの工程の作業性にも改善が見られた。以前は、切断されたナイロンコードの計上にはばらつきがあり、のちのインサート成形の工程で加工するには作業員の経験と技術が要された。今回のシステム構築で形状のばらつきが小さくなったことにより、作業効率と製品品質を向上させることができた。
しかしこのシステムには課題も残る。AIによる画像解析には、製品への光の当たり方や製品以外ものが写真に写ることにより正しい結果が得られない。撮影の方法を改善していく必要がある。これに加えてさらなる品質向上のため、今回のプロジェクトで得たノウハウを活かして、材料のねじれを除去するシステムの開発を予定している。

 

三洋テグス 株式会社

所在地
〒359-0011 埼玉県所沢市南永井265-1
URL
https://www.sanyo-line.com/
支援した
機関
公益財団法人 埼玉県産業振興公社